去年、チェーンの喫茶店は売上を109.8%まで伸ばした。外食のどの業態よりも高い数字だ。
ただ、中身を開けると別の顔が出てくる。客数は101.1%。ほぼ前年並みだった。伸びの正体は客単価108.6%、つまり一杯あたりの値段だ。
そしてその客単価の伸びが、今年に入って103%台まで縮んでいる。客数は相変わらず増えていない。
数字は日本フードサービス協会の調査から。協会に入っている会社のチェーン店を集めたもので、喫茶は7月時点で26社・2,507店ぶんにあたる。
まず去年、2025年の1年間。喫茶の売上は109.8%だった。同じ年の外食全体は107.3%なので、業態の中では一番の伸びだ。
その内訳が、店舗数100.6%、客数101.1%、客単価108.6%。店の数もお客の数もほとんど変わっていない。値段だけが上がって、売上を持ち上げていた。
四半期ごとに区切って見ても、この形は1年を通して崩れなかった。
今年に入って、この形が変わり始めている。
客単価の前年比は、1月106.7%、3月103.7%、6月103.0%、7月103.4%。去年の108%前後から、5ポイントほど縮んだ。
客数の方は、3月101.5%、6月97.7%、7月101.0%。やはり前年並みのままだ。
7月の他の業態と比べると、喫茶の客単価103.4%は、外食全体の103.5%とほぼ同じ。去年あった「喫茶だけ突出して単価が伸びる」状態ではなくなっている。
協会は月ごとの説明として、期間限定メニューやグッズのキャンペーンによる客単価の上昇を挙げている。ただ、単価の伸びが縮んでいること自体への説明は、確認できなかった(8月30日に確認)。
カフェや喫茶店は、席数と営業時間で売上の上限が決まりやすい商売だ。満席の時間が増やせなければ、客数は簡単には伸びない。チェーンでもそうなっている、というのがこの数字だ。
だから値段を上げる。それ自体はおかしなことではないし、去年まではそれで伸びていた。問題は、その幅が縮んできたときに、次の手を持っているかどうかになる。
昼のピークだけ混んでいて、あとの時間が空いている店。テイクアウトをやっていない店。ここに当てはまるなら、客数の余地はまだ店の中にあるかもしれない。
食事が主で、コーヒーは食後の一杯という店には、当面は薄い。
これはチェーンの数字で、個人店の数字ではない。席数も立地も客層も違う。自分の店に当てはめる前に、まず自分の伝票を見た方がいい。
「客数101%」は、客が減っているという意味ではない。前年並み、ということだ。減少と読み替えないようにしたい。
小さく試すなら、去年と今年の同じ月で、客数と客単価を出して比べてみる。売上を客数で割るだけでいい。売上が伸びていても、客数が横ばいなら、伸ばしていたのは値段だったことになる。それが分かるだけでも、次に何を動かすかの見当がつく。
値段を上げるな、という話ではない。上げてよいし、上げるしかない場面もある。ただ、値上げ以外の引き出しを一つも持たないまま来ていないか、という点検にはなる。
段階を「予兆」としたのは、客単価の伸びが縮み始めたのが今年の3月ごろからで、まだ半年ほどしか見えていないからだ。
弱いのは、単価が上がった中身が分からないことだ。値上げなのか、客が一品多く頼むようになったのか、協会は内訳を出していない。
この見立てが外れるとしたら、秋から冬にかけて単価の伸びが戻る場合だろう。去年の11月は109.9%だった。年末に向けて同じ形になるなら、今年前半は一時的なへこみだったことになる。
記者 安東 菜津
正直に言うと、この記事を読んで、うちの数字を思い返した。客数は、たぶん去年より少し減っている。
でも、それを「まずい」とだけは思っていない自分がいる。去年、広告費を少し削った。そのうえでFL率、とくに人件費率を下げる施策をいくつも回した。オペレーションを大きく変えたぶん、正直みんなにかなり負担をかけた。だから、お客さんが少し少ないくらいの方が、その負担が抑えられて、ちょうどよかった面もある。減った、と、助かった、が、同じ場所にある。
値段は上げた。でも客数は変わらなかった。ここは記事の言う通りで、値上げでお客が逃げる、みたいなことは、うちでは起きなかった。
じゃあ客数を増やす手がないかというと、そんなことはない。毎月の目玉メニューを作る、それをちゃんと発信する、定休日をなくす、広告を打つ。やれることは、まだまだたくさんある。……と、ここまで書いて気づく。手はあるのに、僕は今、あえて全部は打っていない。
負担を増やしてまで客数を取りに行くのか、今のちょうどよさを守るのか。アクセルとブレーキを同時に握っているみたいで、そこの答えは、まだ出ていない。