値上げが続き、定食やランチは1,000円に近づく。だが「1,000円の壁」の高さはメニューで違う。日常のごはんに見える一皿ほど壁は高く、ごちそうに見える一皿ほど壁は低い。
だから全品一律ではなく、壁の低い一皿は「納得感」で堂々と1,000円を超え、日常の一皿は形を変えて残す。
日本フードサービス協会によると、2025年の外食全体は売上が前年比107.3%、客単価104.3%、客数102.9%。伸びたのは客数でなく値上げ(客単価の上昇)による(事実:日本フードサービス協会)。背景は材料費・人件費・光熱費の上昇で、2026年もペースは落ち着くが価格は戻らない(事実:帝国データバンク)。リクルートの調査では、平日ランチの平均額は485円、前年比7.3%上昇(事実:リクルート)。
リクルート ホットペッパーグルメ外食総研の調査(2024年11月、全国20〜60代 1,035人)では、1,000円以上に抵抗を感じる人はかつ丼84.0%、カレー82.8%、ラーメン76.6%と高く、海鮮丼は比較的低い(およそ半数強)(事実:リクルート外食総研)。つまり壁は金額より、その一皿にどれだけ納得できるかで決まる(推測)。
やよい軒・すき家・マクドナルドが価格を上げる一方、大戸屋は看板を930円に据えて壁の手前を保つ(事実:各社告知・報道)。
関係が深いのは、定食・ランチが主力で価格が1,000円前後に近づき、「安さ」が来店理由の店。値上げの伝え方を誤ると客離れになりやすい。一方、客単価が高くコースや専門性で納得感ができている店や、価格より人との関係で来店が決まる店は、壁の外だ。
大手の据え置きは、大量仕入れと仕組みで原価を抑えられるのが前提だ。小さな店が安さだけを守れば、原価か自分の働く時間を削りやすい(推測)。真似るべきは価格の付け方でなく、「どの一皿で納得感を作るか」の考え方だ。
拡大中・中〜高。 「値上げで客単価が上がる」「1,000円の壁はメニューで違う」の二点は、日本フードサービス協会とリクルートの別々の調査が裏づけ、確度が高い。ただし「納得の一皿に寄せるべき」は推測で、「安さ」だけが来店理由の立地では値上げが客離れに直結する。選び分けの視点で受け取ってほしい。
記者 安東 菜津
この記事は、1,000円の壁はメニューごとに高さが違う、と書いている。読んで、うちの値付けを思い返した。
もったいない食堂の一番人気は「もったいない定食」の2,530円。これはもう壁のずっと外側にある。むしろ僕が壁を意識していたのは逆側で、こども定食と、いま休んでいる朝定食を990円に置いたときだった。1,000円のすぐ下に、なんとなく止めていた。
僕は値上げと品数削減なら、値上げのほうが抵抗が少ない。安さを守るために質や自分を削るより、値段に見合う価値を伝えて上げるほうが性に合っている。いまは、こども定食をそろそろ1,000円の向こうへ出そうかと思っている。1,000円以上の価値があると感じているからだ。
この記事を読んで、990円を1,010円にするあの「たった20円」が、金額じゃなく納得感の壁なんだと腑に落ちた。値段だけ動かしても越えられない。自分の店のことなのに、記事のほうに教わった気分だ。僕もまだ、一本ごとに学んでいる。