売上・集客2026.07.09拡大中

朝食市場は伸びている。でも個人店は軽い気持ちで朝営業を始めてはいけない

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朝ごはんを外で食べる市場は、数字のうえで確かに伸びている。

でも、その伸びをうまく取り込めているのは大手だ。大手は、朝の安い客単価でも回る仕組みを持っている。小さな個人店が同じことをそのまま真似ると、割に合わないことが多い。

だから「市場が伸びているから」を理由に、朝営業を始めないでほしい。先に二つのことを確かめる。ひとつは、自分の店の場所に朝の需要があるか。もうひとつは、開店から人を置いても、客単価でその費用を取り戻せるか。

多くの店にとって、答えは「いつも朝営業はしない」になる。もしやるなら、曜日や予約をしぼった小さな実験から始めるのが安全だ。

業態トレンド予報

拡大中。

朝食の外食市場は、過去最高を更新し続けている。大手やチェーンが、朝の時間帯に商品と人を投入している。

共働き世帯や単身世帯が増えているという人口の変化が、この動きを支えている。だから、短い流行ではない。

何が起きているか

朝食を外で食べる市場は、数字で見ても伸びている。

調査会社サカーナ・ジャパン(Circana、旧NPD Japan)によると、外食業態の朝食市場規模は2023年7月〜2024年6月で5,190億円だった。前年の同じ時期より9.2%増、コロナ前の5年前と比べると22.0%増になる。調査を始めた2014年以降で過去最高だ(事実:Circana、年間13万超のサンプルを集計する CREST サービスによる)。

1年前の同じ集計では、前年比29.5%増だった。そのときのほうが、勢いはさらに強かった(事実:同)。

使われ方の「濃さ」も出てきた。

2024年4月〜2025年3月の集計では、ある牛丼チェーンで、一人あたりの年間利用回数が朝食3.75回・昼食2.54回だった。朝食が昼食の約1.5倍に達したチェーンもあった(事実:Circana、2025-07-09発表)。背景には、共働き世帯や単身世帯の増加がある(推測、Circanaも同趣旨を指摘)。

一方で、誰もが毎朝外で食べているわけではない。

ホットペッパーグルメ外食総研の調査(20〜60代 男女1,035人)では、平日に朝食を外で食べる人は15.0%だった。そのうち「毎日」という人は3.4%にとどまる。利用が多いのは男性20代(39.7%)で、年代や性別によって大きく偏っている。

客単価は、平日も休日も500〜800円未満が中心だ。平日は約8割が800円未満だった。求めていたのは「プチ贅沢」「コスパ」「目覚め・やる気」だった(事実:外食総研)。

つまり、いまの姿はこうだ。市場全体は伸びているが、需要は「若年層・都市の通勤動線・低単価」に強く偏っている(事実+推測)。

なぜ今なのか

共働き世帯や単身世帯が増えた。家で朝ごはんを作らず、外で済ませる暮らしが広がっている(推測、Circanaも同趣旨)。

そこへ大手が動いた。「朝は売上が薄い時間帯」を埋める商品を出し、モバイルオーダーや専用メニューで素早く出す仕組みを整えた。

需要側の生活の変化と、供給側の効率化が同時に進んだ。 これが、市場を過去最高まで押し上げている。

大手はどう動いているか

代表例が、マクドナルドの「朝マック」だ。

全国のほとんどの店で、朝5:00〜10:30の時間帯だけの提供にしている。レギュラーとは別の専用メニューを、コーヒーとセットで素早く出す(事実:マクドナルド公式)。

もともと売上が薄い早朝を、新しい収益源に変える狙いだ。2025年も、朝マックを広告の主軸に置いている(事実:同社ニュース)。

ここで効いているのは、こういう構造だ。開店から人を置いても、多い客数と省人化した仕組みで、低い単価をならせる。

専用メニューにしぼると、仕込みと提供が軽くなる。だから客単価が低くても、回転と客数で採算に乗せられる。

小さな飲食店にどう関係するか

関係する店

  • 駅前・オフィス街・通勤動線上にある店。朝から人が通る場所なら、単価が低くても客数で成り立つ余地がある。
  • もともと早い時間から、仕込みで火や人が動いている店。開店を早める追加コストが小さい。
  • 昼と夜のピークが弱く、朝に空いている席や人手がある店

関係しない店

  • 住宅街にあったり、夜が中心で、朝は人が歩いていない店。市場が伸びていても、店の前の道に朝の需要がなければ関係がない。
  • 少人数やワンオペで、昼と夜だけですでに手一杯の店。朝を足すと、一番大事な昼と夜の質が落ちる。
  • 客単価を上げにくい業態。朝の500〜800円では、開店からずっとかかる人件費を取り戻しにくい。

真似しない方がいい部分

大手の朝営業は、ある前提の上に成り立っている。単価が低くても、多い客数と省人化で採算を取るという前提だ。

小さな店が同じ発想で朝を開けると、どうなるか。単価は同じく低いのに、客数も省人化も足りない。開店から人を置く人件費だけが、先にかかってしまう(推測)。

数字で置くと分かりやすい。

カフェ業態では、人件費率は売上の2〜3割が一つの目安になる。これに原価を合わせたFL比率(かんたんに言うと、食材費と人件費を合わせた割合)を55%前後に収められるかが、採算ラインとされる(一般的な採算構造・推測)。

時給1,100円のスタッフが早朝に張り付くとする。客が数人で単価が数百円の朝は、その時間だけで赤字になりやすい。

「市場が伸びている」は、あなたの店の朝が黒字になる理由にはならない。 ここを混同するのが、一番危ない。

反対意見・失敗の可能性

  • その地域で一番の朝需要をつかめば、個人店でも成り立つ例はある。 近くに朝営業をする競合がなく、常連づくりに効く場所なら、単価が低くても回る。
  • 朝営業が、店のイメージづくりや常連化に効く場合がある。 朝だけの採算は薄くても、昼や夜へお客を送れるなら、投資として意味を持つことがある。
  • 需要の偏り(男性20代・都市)を逆に生かせる場所もある。 自分の店の客層と朝の需要が重なるなら、一般論より強く出る。

予報の確度

中〜高。

「朝食市場が伸びている」という事実は、確度が高い。Circana(市場規模)と外食総研(利用実態)という、独立した二つの調査が同じ方向を指しているからだ。

一方で「だから個人店はやめておけ」という結論は、推測だ。朝の低い単価と、開店からかかる人件費という採算の構造から導いている。だから、場所によっては例外が出る。

断定ではなく「まず確かめてから」をすすめる確度、と受け取ってほしい。

情報源・確認日を見る

記者 安東 菜津

編集長手記

この記事は、朝食市場が伸びていても個人店の朝営業は割に合いにくい、と書いている。読んでいて、去年までのうちのことを思い出した。

もったいない食堂も、先月まで日曜だけモーニングをやっていた。やめた理由は一つじゃない。人員、採算、それに——たくさんお客様が来てくれた日ほど、昼営業の仕込みが崩れること。この「朝が昼を食う」感覚は、記事の数字を読んで初めて言葉にできた気がする。朝の売上から朝の人件費を引くだけでは見えない、小さな店だけが抱えるコストだ。

うちの周りは、平日の朝はほとんど人が歩いていない。でも土日は観光地や宿泊施設が近くて、朝食を探している人が実際にいる。だから僕の中では「朝営業をやるか」ではなく「土日だけ、昼を壊さずやれるか」が問いだった。人手が戻れば、日曜モーニングはまた再開したい。

この記事を読んで、自分がなぜ畳んだのか、なぜまだ迷っているのかが、少し整理できた。僕もまだ、一本ごとにこうして学んでいる。

編集長 西村まさゆき
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